タロットカードといえば、ウエイト版と呼ばれているタロットパックを一番先に思い浮かべます。
ライダー=ウエイト版と一般に呼ばれているタロットカードの「ライダー」とは彼の考案したタロットパックを
最初に出版した出版社名のこと。
実際にはウエイトが原案を作り、それを絵に表現したのは
パメラ・コールマン・スミスという画家です。ニックネームはいたずら好きな妖精「Pixie」。
ピクシーといえばストイコビッチをつい思い出してしまうわw
ニューヨークを行き来しながら過ごした後、当時有名だったアーサー・ウエズリー・ダウに師事し
ニューヨークで絵画を学び、私生活の紆余曲折を経て画家にはならずに商業イラストレーターとなります。
イラスト製作もしながら、
ジャマイカで過ごした経験を生かした民俗絵本やイラスト本を出版したり、その後、当時の有名女優
エレン・テリーが主催する小劇団のコスチュームデザインや舞台美術を担当したりといった
創作活動をしています。また英国の婦人参政権推進のための啓発ポスターのイラストも描いており、
社会派の一面もあったようです。
1901年彼女は近代西洋儀式魔術の秘密結社「黄金の夜明け団(The Hermetic Order of the Golden Dawn )に入会し、
そこでウエイトと運命の出会いをします。
入会します。パメラは音楽を聴くとインスピレーションが研ぎ澄まされ、音楽から得た霊感を絵として
描き出せるという特質を持っており、その彼女の霊感の鋭さに着目したウエイトはタロットカードの作画を
パメラに依頼しました。彼女は1909年4月から10月の6ヶ月間の超スピードで
大・小アルカナのフルデッキ78枚の作画を完成させて(実際には80枚以上描いたらしい)、
こうしてライダー=ウエイト版が同年12月に出版されました。
その後から続々と出るタロットカードは、このライダー=ウエイト版の図柄を元にデザインされていることが多いようです。
カードを出版した際、一緒に「タロットの鍵」という占い解説本まで出したウエイトですが、実は
タロットカードはあくまで秘術をシンボル化して伝えるためのアイテムで、占いに使うことは邪道だと思っていた
ようです。どないやねんw なかなか商売上手だったってことで。
それまでで一番有名なタロットカードはマルセイユタロットと呼ばれているタロットデッキで、
そのマルセイユ版と比べても大アルカナの方は絵のタッチは違えど構図はほぼ同じ。
そのうえさらに神秘主義的な色や要素を入れたいと思ったウエイトは自分が絵が描けないものだから、
細かなイメージの指定を文章にしてパメラに渡していたようで。そうするしか方法ないけどw
小アルカナについてはウエイトがパメラに対してさほど細かい指定はしなかったので、その分
小アルカナの方がパメラの才能が遺憾なく発揮されていると言われています。
とはいうものの、いくつかはイタリア・ルネサンス期のソーラ・ブスカ家が所有していたカードのデザインを
参考にしていたようです。(詳しくは伊泉龍一著「タロット大全」に書かれています。
この本、タロットの占い方は殆ど書かれておらず、タロットカードのデザインを軸とした西洋オカルティズム及び
オカルティスト史概論?のような内容になっていて、タロット占いに興味がなくても
オカルト・神秘主義秘密結社好きだったら間違いなく楽しめます)
小アルカナの中でも特に数札(ヌーメラルカード)においては マルセイユ版の場合は
ただ剣・棒・カップ・コイン(ペンタクル)がその数だけ上下対称で描かれているだけのシンプルな札にな
っているのにのに比べ、
お芝居の一幕を見ているようにドラマチックに描かれています。それそれのカードの意味を知らなくても
その絵のおかげで
ぱっと見ただけでそのカードが良い意味なのかそうでないのかぐらいは何となくわかるから便利w
(ウエイト版が発表されるまで多分、ヌーメラルカードの正位置・逆位置を採用する
タロット占いの解釈方法はなかったのかも。。)
そういう理由で初心者はとりあえずウエイト版を買っておけと薦められてるんだろうな・・私も実際そうだったし。
というか、こだわりのある特別なお店以外、ウエイト版しか売ってないやんw
私が初めて買ったのは小学校高学年か中学生ぐらいの時、近所のおもちゃ屋さんだったんだけれど、
勿論ウエイト版しかなかった。
でも今から思えばライダー社のではなく、もっとはっきりしたトーンのアルバノ社が出したウエイト版だったような。。
あ 脱線w
タロットデッキが発表された後、パメラは秘密結社や神秘主義から距離を置くようになり、
これだけ彼女の描いたタロットデッキが世界一有名になったのに、
彼女には最初に支払われた幾ばくかのロイヤリティのみ。
その後もいろんな出版社がこのタロットデッキを再版していまして(微妙な色やトーンはその時々の印刷事情で
オリジナルとは違ってたりします)、
コンスタントにロイヤリティがもらえていてるとしたらそれは莫大な金額だったのではないかと思われ・・
なのに、パメラ自身亡くなるまでとても経済的に困窮していたそうで、
彼女の死後、作品は借金の返済のために競売にかけられてかなり散逸してしまったようです。
現存している彼女の作品はここに詳しくあります。素朴で優しい感じの画風ですね。
ウエイトの名前ばかりが前面に出てしまい、すっかり影に隠れてしまった彼女の功績を再評価しようと
近年海外のタロット研究家の中で、
「ライダー=ウエイトパック」ではなく「ウエイト=スミスパック」と呼ぶ人が増えているそうです。
生きている間は無名で、亡くなってから評価されるのが本物の芸術家だという言葉をどこかで
聞いたことがありますが、死後もなおタロット占い界で金字塔を打ち立て続けている?タロットデッキの作者と
して、芸術家パメラ・コールマン・スミスはどう思っているんでしょうかね。。